異常現象です。
サウジアラビアとロシアの原油価格戦争で、
市場には原油があふれています。
需要が蒸発し
買い手を探すことも困難な状態。
サウジアラビアは
産出した原油の大半を洋上で保管するという
前代未聞の対策をとっています。
サウジアラビア石油当局の関係者によると、
世界のスーパータンカーの少なくとも10隻に1隻は、
洋上の原油保管施設として使われているそう。
そうした多くがサウジ産原油を満載したまま、
買い手がつかずに海上を漂っているのです。
異例の市場力学が働き続け、
原油相場は21日も急落に歯止めがかかっていません。
米原油先物は前日、
史上初のマイナス価格に。
お金を払って原油を買うのではなく、
お金をもらって原油を引き受けるという
意味の分からない状態です。
サウジは3月、
安価な原油を市場に放出させる
苦渋の決断を下しました。
それと時を同じくして、
主要経済国は新型コロナウイルスの
感染拡大による閉鎖措置を導入。
原油需要の、さらなる崩壊を引き起こしたのです。
サウジアラビアとロシアは減産合意の一環
という形で価格戦争に終止符を打ち、
サウジアラビアとロシア、そして米国を中心とする
産油国23カ国が協調し、日量970万バレルを削減する協定を結んだ。
サウジアラビアとロシアの対立の発端は、
サウジアラビアが主導の協調減産計画を巡り、
ロシアが3月に参加を拒んだこと。
サウジアラビアはこれを受け、
価格を引き下げると共に増産に転じ、
世界の原油価格は坂を転げ落ちるように下落したのです。
価格戦争の打撃は
価格戦争に終止符を打った今でも残ります。
サウジアラビア関係者によると、
世界のスーパータンカー750隻のうち80隻が、
輸送目的ではなく原油の貯蔵に利用されているというのです。
商品(コモディティー)データ会社Kplerによると、
洋上保管されている原油は4月19日までの週に
2100万バレル増加して1億4760万バレルに達し、
世界の在庫増加分の大部分を占めています。
サウジアラビアの国営石油会社サウジアラムコ幹部は、
「サウジアラビアは現在、ガワール油田など生産設備の一部を
閉鎖しなければならないかもしれない状況に直面している。
買い手がいないためだ」
と指摘。
「買い手に貯蔵能力がないという事実があり、
求める生産水準がどうであれ、
それを貯蔵する場所がない」
と述べた。
石油輸出国機構(OPEC)加盟国の当局者によると、
貯蔵能力の限界が迫り、生産国は市場の混迷に
歯止めを掛ける新たな措置の検討を強いられているとのこと。
OPEC代表団は21日中に電話会議を実施し、
足元の市場危機について協議する見通しですが、
その場で決定を下すことは目指していないといいます。
海運追跡ウェブサイト「FleetMon」のデータによると、
3月下旬に原油を積載してサウジから出港したタンカー少なくとも4隻が、
4月上旬以降、エジプトやシンガポール、マレーシアの沖合を
行く当てもなく漂泊しているんだとか。
そのうち2隻は4月上旬以来、
エジプトのアインソクナ近海に停泊。
とんでもない世の中になってきましたね。